お茶の種類(呼び方)
煎茶
日本で生産されるお茶は、ほとんどが緑茶です。栽培方法、摘採時期、製造工程などの違いによって、さまざまな種類のお茶になります。
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煎茶は、緑茶の中で、もっともよく飲まれている代表的なお茶です。茶園で栽培した生葉は、摘採した時点から発酵が始まりますが、緑茶は新鮮な状態で蒸したり炒ったり熱処理することで酸化酵素の働きを止めます。こうして、生葉を熱処理し、葉の形状を整え、水分をある程度まで下げて保存に耐えられる状態にしますが、もっとも一般的な製法で蒸して揉んでつくられたお茶を「煎茶」と呼びます。
玉露(ぎょくろ)
新芽が2〜3枚開き始めたころ、茶園をヨシズやワラで20日間ほど覆い、日光をさえぎって育てたお茶が「玉露」になります。光を制限して新芽を育てることで、渋味が少なく、十分なうま味をもった味わいのお茶になります。
抹茶
「てん茶」という、あまり耳馴染みがないお茶ですが、そのてん茶を出荷する直前に石臼で挽いたものが「抹茶」です。てん茶は、玉露と同じように、茶園をヨシズやワラで覆い、日光をさえぎって育てた生葉(一番茶)が原料ですが、蒸した後、揉まずにそのまま乾燥し、茎や葉脈などを除いた後の細片が「てん茶(碾茶)」です。一般に、玉露の被覆期間である20日前後より長く被覆されます。「碾(てん)」とは挽臼のことで、挽臼で粉砕するためのお茶から「てん茶(碾茶)」と呼ばれます。
お点前における濃茶(こいちゃ)用の抹茶は、以前は樹齢100年以上という古木から摘採した茶葉が使われましたが、近年はさみどり・ごこう・あさひ・やぶきたなど濃茶に適した品種を選び、良質なものが濃茶用とされています。
一番茶
一番茶とは、お茶の種類ではなく、その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくった「新茶」の呼び方です。以降、摘み採った順番により、「二番茶」「三番茶」と呼ばれます。「一番茶」のことを「新茶」と呼ぶこともありますが、「一番茶」は「二番茶」「三番茶」などと対比して使われることが多く、「新茶」は1年で最初に摘まれる「初物(はつもの)」の意味を込めて、「旬」のものとして呼ばれます。
新茶は、鹿児島などの温暖な地域から摘み採りが始まり、桜前線と同様に徐々に北上していきます。京都のお茶の「一番茶」は、4月下旬に摘み採られます。
新茶の特徴は、何といっても若葉の「さわやかですがすがしい香り」にあり、「二番茶」「三番茶」に比べて苦渋いカテキンやカフェインが少なく、うま味、甘味の成分であるアミノ酸が多く含まれます。
八十八夜
「夏も近付く八十八夜」と歌にもありますが、「八十八夜」とは立春(2月4日)から数えて88日目の日をいいます。茶樹は、冬の間に養分を蓄え、春の芽生えとともにその栄養分をたくさん含んだみずみずしい若葉を成長させ、それが新茶となるのです。昔から、この日に摘み採られたお茶を飲むと、一年間無病息災で元気に過ごせると言い伝えられています。
緑茶の産地
静岡県
日本では、北は秋田から南は沖縄まで、広い範囲でお茶が栽培されています。「お茶」と聞けば、どこが思い浮かびますか?静岡、宇治、あたりはとても有名ですね。
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「お茶といえば静岡」と誰もが連想するほど、日本茶の産地として有名で、生産量も国内最大です。
松尾芭蕉が「駿河路や花たちばなも茶のにほい」と詠んだことからも、古くからのお茶の産地であったことがうかがえます。現在では全国の約4割を生産する大産地です。 川根・天竜・本山(ほんやま)などの山間地は、気象条件に恵まれた高品質のお茶の産地として有名ですし、牧之原周辺では、味の濃いお茶づくりをめざし、苦渋味の少ない深蒸し煎茶の製法が開発されました。
鹿児島県・三重県・宮崎県
静岡に続いて、国内の生産量では、鹿児島県・三重県・宮崎県が続きます。
鹿児島県では、平坦で広大な地形を活かし、機械化が進んでいます。また、日照量が多いため品種改良、また簡易被覆をした栽培が行われています。種子島のものは、極早生、早生のもので、一番茶は3月上旬に摘み採られます。
三重県では、南北朝時代の文献に当時の銘茶産地として、この地方の伊賀、伊勢が挙げられていました。現在では静岡県・鹿児島県に次ぐ第3位の生産量を誇り、「伊勢茶」として知られています。
宮崎県は国内第4位の生産地です。「宮崎茶」としてブランド統一を行う一方で、高千穂・五ヶ瀬地方には伝統的な製茶技術が伝わっています。
京都府
京都府は、高い品質を誇る産地です。京都では、明恵上人(みょうえしょうにん)が栂尾(とがのお)で茶の振興をはかり、山城・宇治・仁和寺・醍醐などに植えたのが宇治茶の始まりといわれています。そして、足利義満・義政が栽培を奨励したことから、京都は有名になりました。現在は、宇治、宇治田原、和束(わづか)、山城などがその産地です。
現在、日本各地に普及しているお茶の栽培技術や製茶法(蒸熱法)をみても、その大部分が宇治にならったものであることがわかります。また、宇治では生産量よりも品質・のれんを誇るといわれ、長年の経験に基づいた茶畑の管理と恵まれた自然を活かし、上質の玉露・てん茶・煎茶の産地となっています。